[背景・ねらい]
キンメダイは天皇海山〜本州南岸〜小笠原諸島〜琉球列島海域という広い分布域を持ち、寿命が長く成長も遅いことや、卓越年級群によって、その数年後以降の漁獲を支える資源構造上の特徴を持つことが知られている。この卓越年級群の発生を察知するため、若齢魚の発生状況の定量的な調査を2017年から継続実施した。
[成果の内容・特徴]
1 東京湾口海域と伊豆諸島周辺海域の立縄漁船による小型魚(200〜400g)のCPUEは、2014〜2015年を境にCPUEは増加に転じたものの、2019年には大幅に減少し、2020年も引続き低い水準であった(図1)。
2 2017年以降に東京湾口海域で若齢魚の捕獲調査を行ったところ、尾叉長16〜32cmの小型魚が得られた。
3 2017、2018年には16〜19cmの1歳魚、22cm前後の2歳魚が多く、2019年の調査では3歳以上が主体となったものの、2020年には再び1,2歳魚が主体に捕獲された(図2) 。捕獲個体数は2017年が最も多く、その後減少に転じて2020年に最少となった。また、調査における1歳魚のCPUE(尾/人・時)も2017年が0.42で、その後減少し、2019年は0に、2020年は0.03と僅かに漁獲される水準となった。
4 これらのことから、2014〜2016年級群の加入量は他の年級群と比べ多く、今後数年にわたり東京湾口から伊豆諸島周辺海域でのキンメダイ資源はこの2014〜2016年生まれの年級群が主体の年級構成で推移すると思われた。
[成果の活用面・留意点]
1 昨年度から、本種の若齢魚の混獲が多くみられる真鶴沖の調査も試験的に開始しており、東京湾口海域での調査と併せて、キンメダイの資源評価からの管理に資する情報としての加入量把握の精度向上を目指す。
2 さらに、ここ数年は千葉県でも東京湾口〜外房海域で新規加入量調査を実施しており、情報の共有を図ることで東京湾口や伊豆諸島周辺海域に加入するキンメダイ資源把握の精度向上を目指す。
3 本研究において、東京湾口海域に加入後数年間は留まることが示唆された一方で、数年後には同海域から姿を消している。これが、成長に伴う南下によるものか、漁獲によるものかが明らかになれば、資源を持続的に利用するためにどのような資源管理措置が有効であるかの判断材料となる。
[その他]
研究課題名:関東近海におけるキンメダイの資源評価に関する研究
研究期間:平成28年度〜令和2年度
予算区分:一般受託研究費
研究担当者:中川 拓朗、岡部 久
発表論文等:令和2年度一都三県キンメダイ資源管理実践推進漁業者協議会資料
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