黒潮大蛇行とシラス船曳網漁況 |
黒潮大蛇行期における春シラスの漁場形成について検討したところ、「大蛇行期は湾内の潮が早くなり漁場が形成されにくい」という従来からの定説とは異なり、不漁とならない年が観察された。このことは、黒潮流路以外にも小スケールな環境変動が漁場形成に及ぼす影響が無視できないことを示唆している。 |
担当者名 |
神奈川県水産技術センター 栽培推進部 |
連絡先 |
Tel.046-882-2314 |
推進会議名 |
太平洋中・南ブロック |
専門 |
資源管理 |
研究対象 |
いわし |
分類 |
調査 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発 |
[背景・ねらい]
本県沿岸のシラス(カタクチイワシやマイワシの仔魚)の漁場形成には、黒潮流路等の海況条件が大きな影響を及ぼすことが知られている。関東近海では平成30年から黒潮の大蛇行期が長期間継続していることから、黒潮大蛇行が本県のシラス船曳網漁業に及ぼす影響について検討した。
[成果の内容・特徴]
1 平成30、31年の初漁期(3月)における黒潮からの暖水波及の状況を水温分布図とHFレーダーの流況図から検討したところ、大島西水道から流入した暖水が波及した後、漁場が形成される様子が観察された(図1、2)。
2 一般に黒潮大蛇行期は湾内へ早い潮が流入することから、漁場が形成されにくく不漁になりやすいと言われてきたが、平成30、31年(2018、2019年)の春シラス漁期(3〜6月)は大蛇行期であっても不漁とはならなかった(図3)。これらのことは、黒潮流路の変動に加え、よりスケールの小さな湾内の海況変動も漁場形成に影響を及ぼしているためと考えられた。
[成果の活用面・留意点]
海底地形や河川水流入など、湾内の小規模な環境変動と漁場形成の関係についても検討する必要がある。
[その他]
研究課題名:神奈川県沿岸域におけるイワシ類の資源研究
研究期間:平成28年度〜令和2年度
予算区分:一般受託研究費
研究担当者:加藤充宏、岡部久、舩木修
発表論文等:黒潮の蛇行が相模湾シラス漁に及ぼす影響、黒潮の資源海洋研究 第18号、H29.3、黒潮大蛇行とシラス船曳網漁況、水産海洋研究 第84巻2号、R2.5
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[具体的データ] |
図1 平成30年3月20日の関東近海の水温分布図
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図2 相模湾のHFレーダーによる流況図
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黄色い丸は漁場が形成された海域を示す.
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図3 本県の春シラス(3〜6月)の漁獲量の経年変化(標本船データより推定)
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