ドコサヘキサエン酸(DHA)に着目したマガレイの形態異常防除 |
マガレイPseudopleuronectes herzensteiniの種苗生産における問題である形態異常を防除する目的で餌料中のDHAに着目し試験を行った。その結果,DHAに対する仔魚の感受期がD〜Eステージ(上屈前仔魚〜上屈仔魚)で,当時期に高レベルDHA(ワムシ中1.7〜3.2%,アルテミア1.4〜2.8%;乾重換算)を投与することにより発達が促進され形態形成が正常に行われることが明らかとなった。 |
担当者名 |
北海道立栽培水産試験場 調査研究部 生物化学科 |
連絡先 |
Tel.0143-22-2320 |
推進会議名 |
北海道ブロック |
専門 |
増養殖技術 |
研究対象 |
かれい |
分類 |
行政 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい]
マガレイの種苗生産では体色白化及び眼位異常に代表される形態異常が発生し,その防除が極めて重要である。異体類の形態異常は変態期における形態形成の異常であると考えられている。形態形成正常化にとって本種の場合,高水温飼育や早期アルテミア給餌を行うことで仔魚の発達を促進することが重要とされている。しかし,これらの知見を応用しても当場の形態正常率は23〜69%と安定しない場合があった。そこで本種の形態正常率を安定させるために,マガレイ仔魚のDHA要求に着目して形態異常防除に関する試験研究を行った。
[成果の内容・特徴]
・餌料中のDHAはマガレイ仔魚のD〜Eステージ(上屈前仔魚〜上屈仔魚,ワムシ・アルテミア併用給餌期)における発達速度を速めた。また,餌料中のDHA含量が本種の形態正常化にとって影響を及ぼす発達段階を検討し,D〜Eステージであることを明らかにした(図1)。
・D〜EステージのDHA要求量(乾燥重量換算)はワムシで1.7〜3.2%,アルテミアで1.4〜2.8%と推定され,この時期におけるDHA強化の基準量を明らかにした(図2)。
・以上のことから本種の形態異常防除では仔魚の発達速度を遅延させず,なおかつD〜Eステージの要求量に適した高レベルのDHAを投与することが重要であると判断された。これらを踏まえて2008年に当場で種苗生産を実施したところ,形態正常率が90〜94%と高く,知見の有効性を実証した。
[成果の活用面・留意点]
本知見を種苗生産関係機関に普及することで,健苗性の高いマガレイ稚魚を効率よく生産されることが期待される。
[その他]
研究課題名:人工種苗の質的向上に関する研究
研究期間:2006年〜2011年
予算区分:道費(道立試験研究費)
研究担当者:佐藤敦一,高谷義幸,三宅博哉
発表論文等:(1)佐藤敦一(2009)マガレイの健苗性向上を図る餌料の改善に関する研究.博士論文,東京海洋大学,東京
(2)佐藤敦一(2009)魚類種苗生産における餌料の栄養条件.育てる漁業1月号,北海道栽培漁業振興公社,札幌.
(3)Nobukazu Satoh and Toshio Takeuchi.(2009)Estimation of the period sensitive for the development of abnormal morphology in brown sole Pseudopleuronectes herzensteini fed live food enriched with docosahexaenoic acid.Fisheries Science75:985-991.
|
[具体的データ] |
|
|