[背景・ねらい]
宗谷海峡は世界的にも希有なミズダコの好漁場であり、地域の重要な水産資源となっています。しかし、近年、燃油代の高騰や操業者の高齢化、豊漁年と不漁年の年較差の拡大により、収入の減少や不漁の問題が生じており、この資源の持続的利用と漁家経営の安定が強く求められています。そこで、ミズダコの資源管理と漁家経営の両立を実現するミズダコ資源管理システムを開発します。
[成果の内容・特徴]
(1)地理情報システムを用いてミズダコ資源の潜在的分布図を作製できました。また、短波海洋レーダーの観測結果から、たこ漁業に最適な潮流発生時間帯が予測できるようになりました。そこで、これらを組みあわせた宗谷岬沖潮流カレンダーを作製しました(図1)。これにより、たこ漁業者が、いつ、どこで、ミズダコを漁獲したら良いかの意志決定を支援できるようになりました。(2)ミズダコの親の保護を目的とした具体的な資源管理方法と、その管理効果を明らかにしました。これにより、漁業者の方々が管理効果に応じた管理方法を選択できるようになりました。(3)地理情報システム(GIS)データベースを中心に、上記成果を統合して、ミズダコ資源管理システムを構築しました(図2)。これよりミズダコの適切な資源管理とたこ漁業の漁家経営の安定に活用できます。
[成果の活用面・留意点]
(1)本資源管理システムは宗谷漁業協同組合に提案されています。(2)水産技術普及指導所は、漁業者に対しミズダコ漁業の操業計画作りを指導しています。(3)GISデータベースは水産試験場が中心となって管理、更新され、他の水産資源の資源評価、資源管理へ活用しています。
[その他]
研究課題名:宗谷海峡の空間情報統合によるミズダコ資源管理システムの開発
研究期間:平成18年度から平成20年度
予算区分:新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(旧 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業)
研究担当者:北海道立稚内水産試験場 佐野 稔,北海道大学低温科学研究所 江淵直人,宗谷漁業協同組合 坂東忠男,稚内地区水産技術普及指導所(現所属:留萌南部地区水産技術普及指導所)鈴木孝輝
発表論文等:ハンデイGPSプロッタを用いたミズダコ資源分布図の作製の試み,佐野稔・坂東忠男,海洋水産エンジニアリング,74号,15-21,2007
Seasonal change in distribution of the north pacific giant octopus Octopus dofleini in the Soya/La Perouse Strait , M. Sano and T. Bando ,The proceedings of the 5th World Fisheries Congress, CD-ROM, 2009
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