サケ卵の媒精から接水までの断水時間が受精・発生に及ぼす影響について |
サケ卵の媒精から接水までの断水時間が受精・発生に及ぼす影響について検討した結果、発眼率、ふ出率及び浮上率ともに媒精後0.5時間以内の接水であれば、一般的に行われている媒精直後の接水と差はなく、良好な種苗生産が可能であることがわかった。 |
担当者名 |
宮城県水産技術総合センター 気仙沼水産試験場 地域水産研究部 |
連絡先 |
Tel.0226-27-2700 |
推進会議名 |
東北ブロック |
専門 |
増養殖技術 |
研究対象 |
さけ・ます類 |
分類 |
普及 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい]
サケ増殖事業において、宮城県内の捕獲・採卵場周辺に適切な用水がないふ化場においては、活魚輸送ではなく、媒精から一定時間経過後にふ化場に搬入して接水・受精するという媒精卵輸送が行われている。媒精から接水までの時間や卵温と受精率等との関連についてのデータがないことから、サケの媒精から接水までの経過時間が受精・発生に及ぼす影響について検討した。
[成果の内容・特徴]
実験は、宮城県南三陸町八幡川と本吉町小泉川に遡上したサケを用いて実施した。
(1)媒精から接水までの断水時間を0.5時間から23時間までの5実験区を設定し、接水後15時間及び17時間の卵割の有無を指標として受精率を算出した。八幡川遡上サケを用いた実験では、卵温4.0〜11.0℃で受精率93〜98%となり、対照区(媒精後直ちに接水した区)の97%と差が認められなかった。小泉川遡上サケを用いた実験では、卵温7.6〜9.1℃で受精率98〜100%となり、こちらも対照区の99%と差が認められなかった(図1)。
(2)小泉川遡上サケを用いた実験における受精率算出時点の卵発生状況は、媒精後1時間以内の接水ではほぼ全てが4割球期にあり発生進行の同調性が認められた。一方2時間以上経過後の接水では2割球期から
16割球期までが混在し、発生進行の同調性は認められず、また、8割球期では異常卵割が80%程度に達した(図2、3)。
(3)小泉川遡上サケを用いた実験では、供試卵の一部を浮上段階まで飼育し、発眼率、ふ出率及び浮上率を算出した。発眼率、ふ出率及び浮上率ともに媒精後0.5時間以内の接水であれば対照区と差はなかったが、1時間後の接水の浮上率で差が認められた。2時間以上経過後の接水ではいずれの値も極端に低下した(図4)。
[成果の活用面・留意点]
(1)サケの受精作業において、現在一部ふ化場で行われている媒精から30分以内の接水により良好な種苗生産が可能である。
(2)8割球期の胚盤観察によりその後の発生の良否が推定可能である。
[その他]
研究課題名:サケ・マスリバイバル事業
研究期間:平成19年度
予算区分:県単事業
研究担当者:熊野芳明
発表論文等:宮城県水産研究報告第9号、2009
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