東北地方の太平洋海域における沿岸水温の長期的な上昇傾向 |
灯台、沿岸定線、定地水温の観測結果を組み合わせることにより、東北地方の太平洋海域における沿岸水温の100年間の変化率を求めたところ、岩手県とどが埼、宮城県江島、福島県塩屋埼では近隣の地上気温の上昇率とほぼ同程度であることがわかった。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター東北区水産研究所 混合域海洋環境部 |
連絡先 |
Tel.022-365-9927 |
推進会議名 |
東北ブロック |
専門 |
海洋構造 |
研究対象 |
海洋変動 |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
5(1)生態系の機能・構造解明及び地球温暖化対策のための研究開発 |
[背景・ねらい]
東北地方太平洋の沖合海域における海面水温には明らかな上昇傾向は認められず、むしろ低下傾向にあることが指摘されている。我が国の平均気温は長期的な上昇傾向にあり、その影響は沖合域よりも沿岸域において顕著に現れると考えられることから、東北地方太平洋の沿岸海域における水温について100年程度の長期的な変化傾向を概観することを目的とした。
[成果の内容・特徴]
沿岸水温として、岩手県とどが埼、宮城県江島及び福島県塩屋埼における灯台水温資料(水産海洋データベースより引用)、各県が実施する沿岸定線観測のうち陸岸寄りの観測点(青森県D-1、岩手県TD-00、福島県S-1、茨城県O-2)における海面水温、宮城県江島における定地水温を用いた(図1)。
1971〜2000年の沿岸水温から各月平年値を求め、その月偏差の1〜12月の平均値を年偏差として、回帰直線の傾きの有意性を検討し、95%信頼限界を算出した。
とどが埼灯台及び岩手県TD-00、江島灯台及び宮城県江島定地水温、塩屋崎灯台及び福島県S-1において重複する観測期間の月偏差により回帰直線を求め、補正することにより同一の時系列として扱った。
沿岸水温は、1910年代以降低下し、1940年代に最も低くなった後、1950年代に比較的高い状態が続いた(図2)。1960〜1980年代に変動が大きくなり、1980年代半ばに著しく低下した後、1990年代に高い傾向で推移したが、2000年代半ばに再び低下した(図2)。
岩手県とどが埼、宮城県江島、福島県塩屋埼での沿岸水温には、100年間にそれぞれ0.55℃、1.02℃、1.21℃の上昇傾向が認められ、隣接するアメダス観測点(宮古、石巻、小名浜)における気温の上昇率と同程度であった(表1)。
[成果の活用面・留意点]
東北地方太平洋の沿岸域において長期的な水温上昇傾向が認められたが、沖合海域についてはむしろ低下傾向が指摘されており、今後も海洋環境のモニタリングを継続して、地球温暖化の影響がどのように顕在化するか監視を続ける必要がある。
[その他]
研究課題名:自動観測ブイを用いた沿岸漁場環境モニタリングによる温暖化影響評価手法の開発事業
研究期間:平成21年度
予算区分:水産庁補助事業
研究担当者:横内克巳・安達宏泰・八木澤功、大水理晴(地方独立行政法人青森県産業技術センター水産総合研究所)、横澤祐司(岩手県水産技術センター)、小野寺恵一(宮城県水産技術総合センター)、佐藤利幸(福島県水産試験場)、小日向寿夫(茨城県水産試験場)
発表論文等:なし
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[具体的データ] |
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