アサリ漁場再生による新規天然資源加入効果の調査 |
漁場再生で天然加入が期待できれば、高水準で安定的な生産を目指せるとのねらいで、新規着底天然稚貝を比較調査した。再生区で最も高密度に加入し、覆砂の漁場再生による天然加入効果が確認された。2年後の密度も再生区で最も高密度な個体群が維持され、安定して生息できる条件にあると考えられた。殻長の成長データから4年目以降に漁獲対象群に加入するものと推測された。
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担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所 海区水産業研究部 海区産業研究室 |
連絡先 |
Tel.0154-91-9136 |
推進会議名 |
北海道ブロック |
専門 |
増養殖技術 |
研究対象 |
あさり |
分類 |
調査 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい]
アサリ生産を回復させるために覆砂による漁場再生が試みられつつある。既存の技術は種苗放流して収穫することを基本に安定生産を目指したが(図1)、生産をさらに高めることに限界があった。もし天然加入が期待できれば放流群に天然群が加わり、高水準かつ安定的な生産を目指せると考え、再生漁場等で天然稚貝の着底と成育を調査した。一般的な再生漁場調査は放流貝を対象としてcm級の大きなサイズを従来は調べていたが、この調査ではmm級からの着底稚貝を対象としていることにもデータの新規性がある。
[成果の内容・特徴]
(1)北海道東部の風蓮湖アサリ増殖場は古い人工干潟で、当初は順調に生産したが漁場劣化で生産が低下したため(図2)、覆砂による漁場再生が実施された。この再生漁場と比較漁場を対象に着底稚貝を調査した。(2)漁場に新規着底した天然稚貝は、再生区で最も高密度(平均9874個体/平方メートル)に加入したことがわかった(図3)。優良区との比較で有意差は無かったため統計的には再生区は優良区と同等の高い密度であったといえる。その他の通常区は有意に低い密度であった。これで、覆砂による底質環境の改善で漁場再生がはかられ、事業レベルでの既存技術に無かった要素としての、天然加入効果が確認された。(3)2年後の生息密度も同様に再生区は最も高密度な個体群が維持されていた(図4)。高密度な着底群は著しく減耗することはなく、再生区は安定して生息できる条件にあるものと考えられた。(4)平均殻長は1年目で8.5mm、2年目で13.5mm、3年目で27.0mmと、順調に成長していた。したがって、4年目以降に漁獲対象群に加入するものと推測された。
[成果の活用面・留意点]
漁場再生により新規の天然資源加入が期待できることがわかったが、再生産を保障する親貝個体群が存在していることが必要条件であると推察されるため、この点を十分に留意する必要がある。
[その他]
研究課題名:アサリ造成漁場の天然稚貝着底と生産に効果的な底質管理に関する調査
研究期間:平成17年度〜19年度
予算区分:水産基盤整備調査事業
研究担当者:伊藤 博・坂西芳彦
発表論文等:1)Experience of Manila clam stock enhancement of artificial tidal flats in Hokkaido. The First International Symposium on Asari Clam -Stock enhancement and management-, Yokohama, 2008
(2)漁場再生でアサリ回復. FRAニュース, Vol.17, 2009
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