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マガレイ稚魚の成長履歴の推定
初期生活期の成長を調べる上で、耳石日周輪解析による成長履歴の逆算は欠かせない。今回はマガレイ稚魚について、耳石微細輪紋幅を用い、Biological Intercept法による成長履歴の逆算を試みた。その結果、本種の着底後の成長履歴は逆算が可能であること、また、オホーツク海沿岸の雄武沖で採集された稚魚の着底後の成長が、日本海沿岸の小平沖で採集された稚魚よりも速いことがわかった。
担当者名 北海道立網走水産試験場 調査研究部 資源管理科 連絡先 Tel.0152-43-4591
推進会議名 北海道ブロック 専門 資源生態 研究対象 かれい 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発
[背景・ねらい]
海産魚類の資源量変動は、卵・仔魚・稚魚期といった「初期生活期」におおむね決定されると考えられている。近年、初期生活期の成長と加入量変動との関係が重要視されているが、この初期生活期の成長を調べる上で、耳石日周輪解析は強力なツールである。本研究は、加入量変動メカニズムの解明の前段階として、2006年にオホーツク海沿岸の雄武町沖と日本海沿岸の小平町沖(図 1)で採集されたマガレイ稚魚の耳石上にみられる微細輪紋を観察し、着底後の成長履歴を推定することを試みた。
[成果の内容・特徴]
(1)マガレイ2006年級稚魚の採集は、両海域とも2006年8月21〜23日の間に行われた。採集時の体長は、雄武沖で採集されたものが平均29.8 mm、小平沖で採集されたものは平均25.3 mmで、雄武沖で採集されたもののほうが大型であった(図 2)。また、耳石上の微細輪紋の数から算出された稚魚が着底した日の中央値は、雄武沖で採集されたもので6月30日、小平沖で採集されたもので6月24日であり、大型であった雄武沖の稚魚が小平沖のものより早い時期に着底していたわけではなかった。

(2)マガレイ稚魚の耳石半径と体長の関係は直線で表された(図 3)。飼育実験から得られた着底直後と思われるマガレイ稚魚の体長は平均9.54 mmであった。したがって、この着底時の体長を切片にし、採集時の耳石径・体長との間に個体ごとに直線を与え、この直線に従って個体ごとの成長履歴を逆算した(Biological Intercept法)。

(3)雄武沖で採集されたマガレイ稚魚は着底後10日で14.2 mm、20日で18.6 mm、30日で22.9 mm、40日で27.0 mmに成長していた。一方、小平沖で採集された稚魚は着底後10日で12.8 mm、20日で15.9 mm、30日で18.9 mm、40日で21.4 mmに成長していた。このように、雄武沖で採集された稚魚のほうが、小平沖で採集された稚魚よりも成長が速かったことがわかった(図 4)。


[成果の活用面・留意点]
1. マガレイについて、加入量変動メカニズムの解明に欠かせない初期成長に関する知見が得られた。

2. 石狩湾以北日本海とオホーツク海のマガレイは1歳よりも高齢の個体で成長差がみられることが報告されているが、0歳時から既に成長差がみられる可能性が示唆された。
[その他]
研究課題名:漁業生物の資源・生態調査研究

研究期間:平成元年〜

予算区分:道単

研究担当者:網走水産試験場調査研究部 城 幹昌

発表論文等:
[具体的データ]




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