水産研究成果情報検索結果




ガリンコ号を用いた冬季の北海道オホーツク沿岸域の観測と海洋環境の季節変動特性の解明
流氷の来遊のために冬季の海洋環境に関する知見の乏しい北海道オホーツク沿岸域において、紋別市と共同で沿岸のモニタリングデータの解析を行った。紋別港外のオホーツクタワーでの水温と塩分は沿岸域での海況を反映した季節変動の傾向を示し、長期データとして利用できる可能性を示した。砕氷船「ガリンコ号」を使って海明け後の紋別沿岸での海洋調査を行い、海洋構造と基礎生産に関する知見を得た。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所 亜寒帯海洋環境部 生物環境研究室 連絡先 Tel.0154-92-1723
推進会議名 北海道ブロック 専門 生物生産 研究対象 植物プランクトン 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 5(2)主要水産資源の調査及び海洋環境等の長期モニタリング
[背景・ねらい]
北海道のオホーツク海沿岸域はホタテガイの増殖やサケ類稚魚の成育場として水産上重要な海域であるが、流氷の来遊によって冬季の観測が困難なために、海洋環境や生物生産力の季節的な変動に関する知見が不足している。水研センター北水研は紋別市と共同で、紋別沿岸域の海洋環境の季節変動の概要を明らかにする目的でモニタリングデータの解析を行った。また、冬季の海洋環境と低次生態系の特性を明らかにするために、砕氷船「ガリンコ号II」(図2)を用いた沿岸域の海洋調査を行った。
[成果の内容・特徴]
北水研のオホーツク海定線(図1)での沿岸域のデータから、春季は表層にオホーツク海低塩分水が分布し、底層には宗谷暖流前駆水がみられ、夏季と秋季は全層にわたって宗谷暖流水によって占められていた。紋別港外の観測施設・オホーツクタワー(図2)でのモニタリングデータの解析結果より、表層の水温は2月に最低、8月に最高となる季節変動を示した(図3)。表層の塩分は1月上旬の最低値以降、流氷の来遊時期に関係なく3月下旬まで増加した。沿岸域を宗谷暖流水が卓越する6-10月にかけて、オホーツクタワーの表層塩分も33.2-33.5の高い水準で維持された。一方、クロロフィルaや栄養塩では、春季および秋季に季節変動の特徴が沿岸域とオホーツクタワーで異なる傾向を示した。ガリンコ号IIによる海洋調査を3月の海明け後に行い、沿岸表層に低温低塩分の水塊、沖合底層に比較的高水温で高塩分の水塊が分布していることが明らかとなった(図4)。
[成果の活用面・留意点]
オホーツクタワーでの海洋モニタリングデータは、水温・塩分については沿岸域の海洋環境を概ね反映したものであることから、年間を通じた長期データの乏しいオホーツク海では重要なモニタリングデータである。これからデータの更なる解析により経年的、長期的な変動の特性が解明されることが期待される。また、砕氷船・ガリンコ号IIによる海洋調査により得られた海明け後の沿岸域の海洋構造と基礎生産力に関する知見は貴重な冬季の研究例である。今後の調査では、今回行えなかった流氷の接岸期、海明け直後の観測とともに、アイスアルジーの現存量と基礎生産力の評価を行うことを目指している。
[その他]
研究課題名:砕氷船“ガリンコ号”による海氷域低次生態系調査

研究期間:平成20−21年度

予算区分:研究基盤強化費

研究担当者:葛西広海、平川和正(現・水研センター中央水研)

発表論文等:

葛西・永田・片倉・平川:2009年度日本海洋学会秋季大会講演要旨集, 185p.

葛西・永田・片倉・平川:2009年度日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会講演要旨集, 89p.
[具体的データ]


図1.北水研オホーツク海定線(右上)と紋別沿岸の観測点の位置.




図2.砕氷船「ガリンコ号II」と紋別市の観測施設・オホーツクタワー(右上、写真提供・紋別市).




図3.オホーツクタワーにおける1996年以降の2m深の水温(A)と塩分(B)、2005-07年のChl.a(C)および2006-07年の栄養塩濃度(D)の平均値の季節変化.赤印は北水研定線の紋別沿岸定点(S1)の表層水の平均値を示す.




図4.紋別沿岸域の水温分布の断面図(3月).測点名は図1の沿岸域に対応.






[2009年の研究成果情報一覧] [研究情報ページに戻る]