[背景・ねらい]
定置網漁業における水揚額のうち、サバ類は2003年以前では2億円前後だったが、水揚げの増加や高い輸出需要から2008年には13億円まで増加した。そこで重要種のサバ類について、漁獲動向の整理と年齢解析を行い、好漁要因の把握と予報に係る基礎資料の収集を目的とした。
[成果の内容・特徴]
(1)水揚の動向
1968年からの本県定置網漁業におけるサバ類の水揚量は、1975年に21,000トンを記録したのちに4,000トンを下回るまでに急降下し、1992年まで低い水準で推移した。その後は回復、降下を挟み、2004年に18,000トンまで急増して以降、高い水準で推移している。また、月別水揚量の推移(図1)をみると、7月から10月に漁獲の殆どが集中していた。1999年〜2004年における盛漁期は9月だったが、2005、2006年は8月、その後は7月となっており、漁期の早期化傾向がみられた。さらに、2007、2008年は漁期の短期集中化傾向もみられた。
(2)年齢解析
サバ類の体長組成(図2)は、多峰型を示し複数の年齢構成が認められた。また、年齢解析は、漁獲年齢を最高4歳と仮定して体長組成を混合正規分布に分解し、年齢−体長関係(資源評価調査事業公表値)から年齢組成を計算した。これに体長−体重関係をあてはめた年齢別水揚量(図3)をみると、特に水揚が多かったのは2004年の3歳魚、2006年の2歳魚、2007年の3歳魚、2008年の4歳魚と1歳魚だった。これを年級別に整理すると(図4)、2001、2004年級が卓越していた。なお、2004年級、2007年級のマサバ太平洋系群は卓越年級群であり(水産庁ほか)、2004年以降の本県におけるサバ類の好漁は、2001、2004、2007年級を中心として、加入尾数の増加に支えられていると推察された。
[成果の活用面・留意点]
長期漁海況予報(水産庁ほか)とあわせて、今後のサバ類の来遊予想などに活用できる。
[その他]
研究課題名:回遊性漁業資源の利用技術の開発
研究期間:平成20年度(平成11年度〜平成22年度)
予算区分:委託(資源評価調査事業)・県単(漁撈試験費)
研究担当者:田中大喜(岩手県水産技術センター漁業資源部)
発表論文等:
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