[背景・ねらい]
ウナギは淡水で成長し海域で産卵する降河回遊型の生活史を持つことが知られているが、実際には広塩性の性質を持ち、成育場として淡水から海水まで幅広い塩分域を利用する。耳石Sr:Caによる回遊履歴の研究では、稚魚期に淡水に入り成育する個体(川ウナギ)、海・河口に留まる個体(海ウナギ)、海水と淡水を成育途中で移動する個体がいることが分かっている。本課題では、稚魚から黄ウナギへの移行期に、どのようにニホンウナギが淡水へ進入する個体と、海・河口に留まる個体に分かれ、定着していくかを理解することを狙いとした。
[成果の内容・特徴]
自然海水と河川水を選ばせる自然条件(水温は、各季節の自然水温)では、シラスウナギ・クロコは河川水を、黄ウナギは自然海水を有意に選好した。塩分を海水に調整した河川水(塩分あり)と自然海水を選択させた場合には、いずれの段階でも河川水(塩分あり)を選好し、発育段階によらずウナギは河川水に含まれる匂い物質(無機塩類以外の物質)を選好した。一方、河川水(塩分あり)と河川水(塩分なし)を選択させた場合には、シラスウナギは河川水(塩分なし)を選好したが、クロコでは塩分選好性がなく、黄ウナギになると河川水(塩分あり)を選好した。このことから、来遊後1年目、海水域でシラスウナギから黄ウナギへと発育するに従い、淡水から海水へと個体の塩分選好性が変化し、海水に定着するものと考えられた。
[成果の活用面・留意点]
本研究結果から、ウナギ資源を保全するには、加入初期に塩分選好性を変えて多様な塩分域への生息を行う生活史を踏まえ、河口堰等の影響をなくすなど、利用可能な成育場を広く確保することが有効だと考えられた。また、ウナギは“淡水”要素よりも河川水に多く含む何らかの“匂い”物質を通して成育場を認識していると推察され、ウナギの海側成育場の範囲等を把握する上で、本研究は重要な手がかりになると期待される。
[その他]
研究課題名:河川及び海域での鰻来遊・生息調査事業
研究期間:平成28~平成30年度
予算区分:水産庁委託事業
研究担当者:矢田崇・福田野歩人・山本敏博・横内一樹・山本祥一郎・阿部倫久
発表論文:Fukuda, N., Yokouchi, K., Yamamoto, T., Kurogi, H., & Yada, T. (2019). Salinity and odor preferences of Japanese eel during the first year of post-recruitment growth in saline water. Journal of ethology, 37(1), 93-99.
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