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新たなガイドラインに基づく貝毒監視体制の確立
 農林水産省で新たに制定された「二枚貝等の貝毒のリスク管理に関するガイドライン」に基づく安全かつ効率的なリスク管理体制の確立を目的とし、機器分析法および簡易分析法に関するマニュアルを作成・公開するとともに、研修会等を開催し普及を進めた。一部の府県では、新たなリスク管理手法を導入し、漁業被害軽減策も具体的な検討を始めるなど、新たなリスク管理体制の確立に大きく貢献した。
担当者名 (国研) 水産研究・教育機構 水産技術研究所 企画調整部門   連絡先 Tel.095-860-1666
推進会議名 水産利用関係 専門 赤潮・貝毒 研究対象 貝類 分類 普及
「研究戦略」別表該当項目 3(1)安全・安心な水産物の供給技術の確立
[背景・ねらい]
 平成27年に新たに制定された「二枚貝等の貝毒のリスク管理に関するガイドライン」では、機器分析法や簡易分析法を生産現場のリスク管理に導入することが可能となった。本ガイドラインでは、貝毒による出荷規制がもたらす漁業被害軽減につながる対策も、安全性の裏付けとなる科学的データがあれば可能となった。そこで、ガイドラインに基づく監視体制推進のため、分析法のマニュアルを作成・公開し普及を進めるとともに、関係府県と協力し漁業被害を軽減する措置の実現に向けた各種分析や調査を行った。
[成果の内容・特徴]
 機器分析法について、13カ国24機関が協力して妥当性(性能の基準を満たしているかどうか)を確認して確立した高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析法及び従来法に比べて2倍以上に高速・高感度な超高速液体クロマトグラフィ−による分析法のマニュアルを作成し公開した (http://www.fra.affrc.go.jp/kseika/kseikaindex.html)。簡易分析法については、農林水産省委託プロジェクト研究で開発した麻痺性貝毒簡易測定キットを用いたリスク管理手法のマニュアルを公開した(http://www.fra.affrc.go.jp/kseika/kseikaindex.html)。さらに、令和元年度まで水産大学校及び(株)プラクティカルと共同で開発を進めてきた下痢性貝毒簡易分析キットが市販化さた(図1)。麻痺性貝毒発生によるトリガイの出荷規制で大きな漁業被害を受けている大阪府と協力し、多数の試料で毒成分の部位別分布を調べたところ、通常食用とする部分では毒成分蓄積が非常に少なく、毒化部位を除去した出荷が可能と考えられるデータが得られた(図2)。今後、毒化部位除去による出荷を具体的に検討することとなり、ガイドラインに基づく漁業被害軽減策の実現に向け大きく前進した。宮城県と協力して調査を行ったアカガイでは、海域区分を従来の2海域から3海域に増やして毒化状況を調べたところ、海域での毒化程度に差が認められた(図3)。これにより、規制海域を細分化することで漁獲増につながる可能性があることが示唆された。


[成果の活用面・留意点]
 新たな分析技術やリスク管理手法を普及するため、水産技術研究所で開催している貝毒分析研修会において講義及び実習を行ったほか、麻痺性貝毒簡易測定キットについては、希望があった民間検査機関、公設試験研究機関、漁協などで講習会を開催して現場への普及に努めた(図4)。その結果、一部の府県では、本キットを利用した貝毒モニタリングを開始し、効率的な監視体制が確立された。
[その他]
発表論文等:イムノクロマト法による二枚貝の麻痺性貝毒迅速スクリーニング法の構築.上野 健一, 細川 葵, 橋本 諭, 及川 寛, 柴原 裕亮, 松嶋 良次, 渡邊 龍一, 内田 肇, 鈴木敏 之.食品衛生学雑誌62(3) p 85-93.

[具体的データ]




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