漁業情報を効率良く収集・活用するアプリケーションの開発 |
これまで漁業現場での収集が困難であった漁獲情報等を、漁業者の作業を軽減し効率良く収集できるアプリケーション(以後、「アプリ」)を開発する。下関では、沖合底びき網漁船全船(5か統10隻)が本アプリを導入し、令和3年度からは市場と連携し、市場のセリ人が沖で漁獲される魚種と量をリアルタイムで把握できる。アプリの社会実装化に向け、漁港を中心とした市場関係者等との協議を進めている。 |
担当者名 |
(国研) 水産研究・教育機構 水産大学校 海洋生産管理学科 海洋生産運航学講座 |
連絡先 |
Tel.083-227-3876 |
推進会議名 |
水産工学関係 |
専門 |
漁業生産技術 |
研究対象 |
その他 |
分類 |
行政 |
「研究戦略」別表該当項目 |
2(2)効率的な漁業生産技術の開発 |
[背景・ねらい]
水産資源を持続的に利用するには、正確な漁獲情報や位置情報等を漁業者に負担をかけず広く収集する必要がある(図1)。しかし、2そうびき沖合底びき網漁業では、2隻分の魚種・漁獲量を紙で集計するため、時間と手間がかかっていた。本研究では、漁業者の手間を省き、漁獲情報等を収集しながら、漁獲成績報告書の自動作成等を行うアプリを開発する。
[成果の内容・特徴]
本アプリでは、漁業者が「どの魚を狙い」、「いつ」、「どこからどこまで」操業した結果、「どのような魚」が「どのような環境に生息し」、「どれくらい(サイズ・漁獲量)か」をデジタルデータ化して収集・蓄積し、漁獲情報を入力すると「水揚げ予想金額」を表示する(図2)。デジタル化された漁獲情報とGPS情報を紐付けることで、過去の操業記録を簡単に検索できる。また、監督官庁へ提出義務がある漁獲成績報告書をワンクリックで自動作成し、指定フォーマットにて出力できる。
漁船がインターネット圏内にいる場合、漁船の位置をリアルタイムに表示でき(図3)、入港地から指定した距離に到達すると、入港予定通知メールや出港通知メールを自動送信するため、漁協や業者等は漁船動向に合わせ動くことができる。さらに、魚箱の使用状況を毎日定時に自動計算し、業者にメールを自動送信する(図4)。業者は魚箱の使用状況を早期に入手することで、無駄な予備品確保や発注をなくし、コスト低減に貢献する。
[成果の活用面・留意点]
令和3年度より、山口県下関市(5か統10隻)、長崎県長崎市(4か統8隻)、愛媛県八幡浜市(1か統2隻)の沖合底びき網漁船全船が本アプリを導入し、基礎研究の最終段階へ進む。また、生産現場と産地市場の情報を双方向でつなぐことにより、消費者ニーズに応じた合理的な漁業の実現が期待でき、収集・蓄積された漁獲情報等は、漁業者の後継者教育や漁業関係者の人材育成に活用可能である。さらに、デジタルデータ化された漁業活動情報の利用は新しい価値を創出する基礎であるため、他漁業への応用が期待できる。
[その他]
研究課題名:AIによる最適操業と漁獲データの自動収集を目的とした基盤技術の創出
研究期間 :令和元年度〜令和3年度
予算区分 :農研機構 生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」
研究担当者:松本浩文
発表論文等:松本浩文 (2021) 漁獲情報の価値を最大化する漁業支援アプリケーションの開発,2021年度日本水産工学会学術講演会学術講演論文集,5-8
|
[具体的データ] |
|
|