水産研究成果情報検索結果




マダコ種苗生産と養殖技術の開発
これまでに開発したマダコ浮遊幼生の飼育技術や給餌技術に加えて、新たに稚ダコの共食いを防ぐ飼育システムを開発し、陸上施設で稚ダコから約4 割の個体を出荷サイズまで育てることに成功しました。
担当者名 (国研) 水産研究・教育機構 水産技術研究所 養殖部門 生産技術部 技術開発第3グループ 連絡先 Tel. 0848-73-5020
推進会議名 瀬戸内海ブロック 専門 増養殖技術 研究対象 たこ 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
マダコ(Octopus sinensis)は日本人にとってなじみの深い食材ですが、近年は国内だけでなく海外でも需要が増加しています。そのため養殖技術開発への期待が高まっていますが、人工的に稚ダコを生産することが困難で、養殖は長年実現しませんでした。そこで、水産研究・教育機構水産技術研究所は、これまでに開発したマダコの種苗生産技術で着底稚ダコを生産することで、その技術の再現性を確認するとともに、前年度に生産した着底稚ダコを用いて、共食いと脱走を防ぐために個別飼育容器で隔離して養殖試験を行いました。
[成果の内容・特徴]
これまでマダコの種苗生産では、ガザミ(ワタリガニ)のゾエア幼生を数日間飼育した養成ゾエアを餌料としていました。今回の種苗生産試験では、マダコ幼生の生残率は、ふ化後0日齢の若齢ゾエア給餌区でも、従来型の養成ゾエア給餌区でも、90%以上の高生残を記録し、着底稚ダコまで成長しました(図1)。従来のようなゾエア飼育作業が不要になることで、餌料確保が容易になり、稚ダコ生産の安定化につながります。

マダコ養殖試験では、令和元年8月より156個体の稚ダコを個別飼育した結果、令和2年6月で73 個体が生き残り(生残率46.8%)、このうち65個体は出荷サイズである体重500gに達し、内25個体は1kgを超えたことを確認しました(図2左)。最終的には、1kgのマダコ12個体を水槽底面積1m2の密度で飼育できました(図2右)。個別飼育で共食いと脱走を防ぎ、高生残、高成長、高密度でのマダコ養殖を実現しました。


[成果の活用面・留意点]
今後、配合飼料の開発、個別飼育容器の改良、給餌や容器底面の残餌の除去などの機械化、閉鎖循環装置の導入によるコスト削減や、養殖技法を効率化することで、実用規模でのマダコの養殖技術開発が期待されます。さらに、陸上での大規模養殖が可能になれば、新規事業者の参入、遊休地の活用、過疎地域での産業創出等に貢献できると考えています。
[その他]
この研究は、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業 マダコ養殖の事業化に向けた基盤技術の開発」として、水産研究・教育機構、東京海洋大学、香川県水産試験場、岡山県農林水産総合センター水産研究所、株式会社くればぁ、マリンテック株式会社の共同で取り組んだ成果です。

この研究の成果は、2020年9月18日に当機構によりプレスリリースが行われました。

http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr2020/20200918/index.html



[具体的データ]




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