離島漁業振興のための水素燃料電池漁船の基本設計等を実施 |
再生可能エネルギーの地産地消などによる離島漁業振興に資する取組みとして、離島で盛んなマグロ養殖の作業船の水素燃料電池船化について研究開発を行いました。養殖作業船として必要な各種仕様を決定し、造船所と共同し建造に必要な一般配置図(図1)や重量重心計算書等を作成しました。 |
担当者名 |
(国研) 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産工学部 漁業生産工学グループ |
連絡先 |
Tel.0479-44-5941 |
推進会議名 |
水産工学関係 |
専門 |
漁船 |
研究対象 |
まぐろ |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
2(2)効率的な漁業生産技術の開発 |
[背景・ねらい]
沿岸地域、特に離島などの遠隔地域において、漁業など第一次産業は主要産業の1つですが、都市から遠いため燃料や資材は割高となり、出荷経費もかさむという弱みがあります。一方で、離島の自然環境は、再生可能エネルギーである洋上風力発電や潮流発電等に適しているという強みがあります。再生可能エネルギーの地産地消などによる離島漁業振興に資する取組みとして、離島で盛んなマグロ養殖の作業船の水素燃料電池船化について研究開発を行いました。
[成果の内容・特徴]
マグロ養殖作業船(19トン型)の作業内容とエネルギー消費量を通年で現地計測し、詳細な作業特性を把握しました。それを基に、水素燃料電池や水素タンク、蓄電池、推進モータ等の性能やサイズ、重量や数を検討し、実用的な漁船が建造できることを確認しました。養殖作業船として必要な各種仕様を決定し、造船所と共同し建造に必要な一般配置図(図 1)や重量重心計算書等を作成しました。また、既存漁船の改装や水素ステーションの建設が困難な地域での運用を想定し、水素燃料電池と水素タンク等を一体化したコンテナ型水素燃料電池システム(図2)の仕様についても検討しました。運搬可能なコンテナ型とすることで、より安全で柔軟な運用が可能となり、例えば被災地への大容量エネルギー運搬など、地域のエネルギー安全保障にも活用できます。さらに、ある離島の人口や漁業経営体数の統計データ、漁船の燃料使用量と CO2排出量の関係などを基礎データとし、システムダイナミクス手法を用いて離島人口と漁業の関係性の定性モデル(図3)を作成しました。このモデルからは、現在「人口増減ループ」が減少方向に働いていること、水素燃料電池漁船の割合が増えていけば、漁業によるCO2排出量が大幅に削減され、人口減少のブレーキになるように「島のイメージループ」が機能することが示唆されています。
[成果の活用面・留意点]
水素燃料電池の養殖作業船への導入検討手法*は他の漁業種類の漁船の電動化にも応用できます。コンテナ型水素燃料電池システムは、地域のエネルギー備蓄や被災地への大容量エネルギー運搬に活用可能で、地域社会のエネルギー安全保障に貢献できます。
[その他]
研究課題名:水素燃料電池漁船による離島の水産業振興のための技術開発 ほか
研究期間:2016〜2020年度
予算区分:交付金プロジェクト
研究担当者:三好潤、溝口弘泰、安田健二、高橋竜三、高尾芳三
発表論文等:Miyoshi J. (2020), Hydrogen Fuel Cell and Battery Hybrid Powered Fishing Vessel: Utilization of Marine Renewable Energy for Fisheries, Modern Fisheries Engineering: Realizing a Healthy and Sustainable Marine Ecosystem, CRC Press.
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[具体的データ] |
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