河川型イワナの降下要因の解明としみ出し効果 |
「種川」からのしみ出し効果の実態を明らかにするために、降下するイワナ稚魚を定量的に捕獲するトラップを開発し調査した。また降下の要因を知るため、水槽実験を実施した。その結果、イワナ稚魚の降下は個体間競争で敗北し、成長段階別の生息場所にいられなくなった個体が降下していると考えられ、降下個体が下流の生息場所に定着することでしみ出し効果が得られると考える。 |
担当者名 |
長野県水産試験場 環境部 |
連絡先 |
Tel.0263-62-2281 |
推進会議名 |
内水面関係 |
専門 |
資源生態 |
研究対象 |
他の淡水魚 |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発 |
[背景・ねらい]
禁漁区を「種川」として増殖した資源が下流の遊漁区へ降下して資源添加する「しみ出し効果」が期待されるが、効果についてほとんど知見がない状況である。そこで山岳渓流で使えるイワナ稚魚の捕獲技術を開発し、イワナ稚魚の降下データの集積と解析により降下する要因を解明する。
[成果の内容・特徴]
長野県内の山岳渓流におけるイワナ稚魚の降下について、本研究において調査した6河川(小西沢(中俣沢)2020、本沢(小曽部川)2020、大倉沢(雑魚川)2021、ガキ沢(雑魚川)2021、藤沢川(土尻川)2022、裏の沢(土尻川)2022))全てで降下が確認され(図1)、支流等の種川から本流の釣り場への資源添加=「しみ出し」は実存することが明確となった。降下が起こる原因として、生息場所を確保するための個体間競争があると考えられ、本研究で実施した水槽実験でも競争行動で敗北した個体が降下することを確認した。また、調査した河川により0+の稚魚だけでなく1+以上の個体も降下していることが分かった。さらにイワナ稚魚の降下は夜間に集中しており、流されているのではなく能動的な行動であることが伺えた。
本研究により得られた知見からイワナの降下についての概念図(図2)を作成した。成長段階別のイワナの生息場所はぞれぞれの河川環境により収容可能な尾数があり、そこに入れなかった個体が降下し、降下先の生息場所に空きがあれば定着することでしみ出し効果となると考えられる。
[成果の活用面・留意点]
種川としてはイワナ稚魚が多く生息できる環境があり、成長するにつれて降下個体が出現する状況が好ましい。従って、今後は浮上直後からの稚魚の生息場所を保全し、生息場所を造成し収容力を増やす技術の開発が課題と考える。
[その他]
研究課題名:環境収容力推定手法開発事業
研究期間:平成30年度〜令和4年度
予算区分:水産庁委託「環境収容力推定手法開発事業」
研究担当者:下山 諒、山本 聡、熊川真二、上島 剛(長野県水産試験場)
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[具体的データ] |
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