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先進的なホシガレイ陸上養殖の社会実装
安価に健全なホシガレイ人工種苗を大量生産する技術を確立するとともに、緑色LED光照射による促成養殖技術を開発した。これらの技術を元に、地元漁協と共同でホシガレイの養殖試験を実施し、3期連続で養殖ホシガレイ(700g)の出荷(約500尾)を達成した。さらに、緑色LED光照射により通常2年かかる養殖期間を1年に短縮できた。
担当者名 (国研) 水産研究・教育機構 水産技術研究所 養殖部門 生産技術部 技術開発第2グループ 連絡先 Tel.0193-63-8121
推進会議名 増養殖関係 専門 増養殖技術 研究対象 他の底魚 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
 新たな増養殖対象種として注目されているホシガレイの種苗生産技術の開発を進め、健全(正常率90%以上)な種苗を安定的(生残率80%以上)に大量生産(50万尾規模)する技術を確立している。

 さらに、特定波長光照射飼育など新たな技術を応用したホシガレイ陸上養殖の技術開発を行い、東日本大震災被災地からの新産業創出につなげることを目的とした。
[成果の内容・特徴]
1)青、青緑、緑、赤、白の発光ダイオード(LED)を設置した試験区とLEDのない対照区を設け、平均全長5cmのホシガレイ種苗を用いて60日の飼育試験を行った結果、緑色LEDで最も成長が良く、対照区と比較して成長促進効果が認められた。2)緑色LED光下で飼育し成長促進させたホシガレイと通常の屋内光で飼育した場合の脳・下垂体を分析し食欲及び成長に関する様々なホルモン遺伝子の発現量を調査した結果、緑色LED光により発現量が増加したのは、メラニン凝集ホルモンMCH-1型だけであり、傍証の段階だが、MCH-1型の食欲亢進作用によって摂餌量が増加し、成長が促進されると考えられた。3)緑色LED光で成長促進したホシガレイと従来法で養殖したホシガレイにおいて、筋肉中の一般成分、遊離アミノ酸組成等の分析、及び官能検査を行った結果、両者で差はなく、緑色LED光照射飼育は養殖したホシガレイの「質」に悪影響を及ぼさないことがわかった。これらの結果により、緑色LED光照射で養殖した魚の安全性に対する理解を、養殖業者と消費者から得られると考えている。4)ホシガレイ陸上養殖の事業化に向けた基盤技術として、飼育密度、水温、塩分など各種飼育条件を明らかにした。以上の技術をパッケージとして新規養殖業者に提供した。
[成果の活用面・留意点]
1)地元漁協と共同でホシガレイの養殖試験を令和元年から開始し、3期連続で養殖ホシガレイ(700g)の出荷(約500尾)を達成した。さらに、緑色LED光照射により通常2年かかる養殖期間を1年に短縮できた。

2)種苗量産技術が確立されるとともに、養殖での飼育条件が解明され、緑色LED光照射による成長促進により養殖期間が1年に短縮できたことから、東北地方の新たな養殖産業として発展することが期待される。
[その他]
研究課題名:重要魚種の生態・生物学的特性に基づく種苗生産と養殖技術の開発および生産の効率化に関する研究開発

研究期間:令和元年〜令和4年

予算区分:運営費交付金一般研究

研究担当者:清水大輔・小島大輔・今井智

発表論文等:1)Shimizu et al. (2019) General and comparative endocrinology. 271 82-90. 2)清水ら (2020) 水産増殖. 68(2) 169-176. 3)Shimizu et al. (2021) Fisheries Science. 87(1) 113-119. 4)清水 (2022) e-水産学シリーズ3「光が彩るヒラメ・カレイ類養殖」. 22-33.
[具体的データ]

図1.ホシガレイ(Verasper variegatus)の成魚
全長65cm、体重4kgまで成長するカレイの仲間。現在では幻の魚といわれるほど資源水準が低下しており、三陸、瀬戸内海西部、九州西部等に分布の範囲は縮小している。


図2.様々な波長で飼育したホシガレイの成長(各n=40)
Shimizu et al. (2019)を改編


図3.緑色LED光照射飼育におけるホシガレイの成長(各n=800、50尾ずつ測定)
1年で出荷サイズ700gに達した(通常は2年) 清水 (2022)を改編





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