新たな赤潮原因生物の特性解明 |
2021年秋季に北海道太平洋海域で発生した大規模有害赤潮について、原因生物の発生起源や赤潮の発生シナリオを推定した。さらに、原因生物の増殖可能水温やそれらの水産生物に対する有害性が一定程度明らかになった。 |
担当者名 |
(地独) 北海道立総合研究機構 中央水産試験場 資源管理部 海洋環境グループ |
連絡先 |
Tel.0135-23-8706 |
推進会議名 |
漁場環境保全関係 |
専門 |
赤潮・貝毒 |
研究対象 |
植物プランクトン |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(3)水産生物の生育環境の管理・保全技術の開発 |
[背景・ねらい]
2021年秋季に北海道太平洋海域で発生した大規模有害赤潮について、発生や移送に係る海洋物理条件や海洋環境情報の収集整理と分析、原因プランクトンの生理生態特性の解明、ならびに被害実態の整理を実施する。これらにより、北海道太平洋沿岸域で有害赤潮が再発した際の被害軽減対策に貢献することを目的とする。(共同研究機関:北海道、水産研究・教育機構)
[成果の内容・特徴]
1)2021年7〜8月に北西太平洋において発生したかつてない規模の海洋熱波が、道東大規模有害赤潮発生の引き金になった可能性が示唆された。
2)本道太平洋海域における海洋観測データとKarenia selliformis(以下、Ksとする)の出現情報を照らし合わせた結果、Ksは道東沿岸流および親潮の影響域に分布していたことがわかった(図1)。
3)2021年赤潮に関連すると考えられる事象を時系列順に整理し、シナリオ(仮説)として模式図化した(図2)。
4)Ksが増殖可能な水温・塩分範囲、および増殖に与える光強度の影響を明らかにした。これらにより、赤潮発生時の水温・塩分環境はKsの増殖に至適であったことが分かった。
5)曝露試験によって、Ksは魚類や棘皮動物類などの衰弱やへい死を引き起こすことが確認されたが、エビ・カニ類では顕著な異常は確認されなかった。
6)Ksの生理生態特性や、暴露試験等による各種生物への有害性、漁業被害の発生状況をふまえ、注意・警戒基準を設定する考え方、必要な情報について検討を進めた。
[成果の活用面・留意点]
本研究の成果は、北海道周辺海域における赤潮被害防止対策の構築に活用される。なお、被害防止対策の構築は、北海道行政、試験研究機関、および漁業現場の相互協力のもとで検討、構築される。
[その他]
研究課題名:北海道赤潮対策緊急支援事業
研究期間:令和3年度〜令和4年度
予算区分:公募型受託研究(水産庁委託)
研究担当者:高嶋孝寛
発表論文等:宮園章、高嶋孝寛、西田芳則、有馬大地、安永倫明、稲川亮、美坂正、安東祐太朗、中川工、黒田寛 2021年秋に発生した北海道の大規模有害赤潮〜その被害および発生過程と特徴〜.月刊海洋000 特集:近年の日本沿岸における赤潮:発生の特徴と新たな対策を考える(2023)
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[具体的データ] |
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