冷凍生ワカメの開発および業務用食材としての定着化 |
生ワカメを食品の製造又は加工上必要不可欠な製造用剤である0.1%水酸化カルシウムを添加した海水(または塩水)に浸漬して真空包装後に冷凍する『冷凍生ワカメ』を2002年1月に開発した。解凍後に加熱しても鮮やかな緑色となり、塩蔵ワカメやカットワカメと比べて風味と食感が良いため、三陸地域の複数の企業により商品化され、サラダ、加工米飯(おにぎり等)、麺類等の具材としての利用が定着化した。 |
担当者名 |
岩手県水産技術センター 利用加工部 |
連絡先 |
Tel.0193-26-7916 |
推進会議名 |
水産利用関係 |
専門 |
加工流通技術 |
研究対象 |
わかめ |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
3(3)水産物の機能特性の解明と高度利用技術の開発 |
[背景・ねらい]
生ワカメをそのまま真空包装して冷凍すると、解凍後に湯通し加熱しても鮮やかな緑色にならず、黄色や黄褐色等の変色部が生じやすいため、生ワカメの冷凍製品はほとんど商品化されてこなかった。乾燥ワカメ(素干し・灰干し等)や湯通し塩蔵ワカメ(以下、塩蔵ワカメと記載)等の伝統的なワカメの加工品に加えて、新しい生ワカメの冷凍技術を開発してワカメの消費拡大を図る必要がある。
[成果の内容・特徴]
1 アルカリ性でクロロフィルを安定化させ、カルシウムの作用で食感を維持するという伝統的な灰干しワカメの製法を応用した生ワカメの新しい冷凍技術(水酸化カルシウム浸漬冷凍法)を開発(図1)し、製造マニュアルを当所HPで2005年12月に公開した。
2 原藻の大きさに応じた浸漬時間、真空包装されるまでの処理時間(液抜けの防止)等のノウハウを指導した結果、2005年から三陸地域の水産加工業者3社で冷凍生ワカメの製造が開始された(写真1〜3)。
3 直近の5年間では三陸地域の1〜2社で合計50〜230トン製造/年(出荷額0.2〜0.9億円、図2)し
ており、コンビニエンスストアや飲食店等で業務用食材として利用されている。
4 冷凍生ワカメは早採ワカメを対象として開発したが、実際の製品では漁期後半の特大サイズを除いた小
〜大サイズのワカメで原藻pHが高い漁期前半〜中盤にかけて製造されている。
5 早採り(間引き)ワカメから製造した冷凍生ワカメ(ボイル後)でも、岩手産塩蔵ワカメ(水戻し後)と同等の食感となり(図3)、遊離アミノ酸は茎に多く残存しているため塩蔵ワカメ(水戻し後)やその二次加工品であるカットワカメ(水戻し後)よりも風味が良く(表1)、藻体内のアルギン酸との結合によりカルシウム量も塩蔵ワカメ(水戻し後)よりも多い傾向が認められた(図4)。
[成果の活用面・留意点]
1 鮮度の良好な原藻(pH6以上を推奨)を使用すること(5℃以下の水温が2週間以上継続している冷水接岸時や漁期後半では原藻pHが低い場合があるので注意すること)。
2 厚さが3cm以下(目安)になるように薄く伸ばして冷凍し、長期冷凍保管は−30℃以下が望ましい。
[その他]
研究課題名:地域特産海藻類を用いた高付加価値化技術の開発(国庫補助事業)
研究期間:平成12年度〜14年度
研究担当者:小野寺宗仲
発表論文等:1)小野寺宗仲.冷凍生ワカメ開発と商品化について(製造マニュアル).2005: 19-22.
2)小野寺宗仲.冷凍生ワカメの開発と商品化について.冷凍.2010; 85(11): 53-59.
3)小野寺宗仲.ワカメの成分と加工特性に関する研究.東京水産大学博士学位論文.2007: 10-27.
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[具体的データ] |
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