音響によるツノナシオキアミの現存量推定精度向上に寄与 |
計量魚群探知機を用いた現存量推定には、1個体からの反射の強さを表すターゲットストレングス(TS)が必要です。水産有用種の一つであるツノナシオキアミについて、TSの理論計算に必要な海水との密度比、音速比を継続的に測定し、その年変化とTSへの影響を調べました。5年間で得られた密度比と音速比から計算したTSと体長の関係式は各年でほぼ同じとなり,年変化の影響を無視できることがわかりました。 |
担当者名 |
(国研) 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産工学部 漁業生産工学グループ |
連絡先 |
Tel.0479-44-5947 |
推進会議名 |
水産工学関係 |
専門 |
計測・調査法 |
研究対象 |
動物プランクトン |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(1)水産資源の持続的利用のための管理技術の開発 |
[背景・ねらい]
ツノナシオキアミ(図1)は、三陸沿岸では漁獲対象かつ養殖の餌料や釣り餌、食用として利用されており、その分布や現存量が求められています。計量魚群探知機を使用した音響調査は、短時間で広範囲を連続的に調査可能という特長を持っており、魚類だけでなくオキアミ類を含む動物プランクトンについても実施されています。音響手法では、現存量を求めるために、計量魚群探知機で得られる体積当たりの音響反射の強さと、理論計算や水槽実験などで得られる生物1個体あたりの音響反射の強さであるターゲットストレングス(TS)が必要となります。過去の知見から、海水に対する動物プランクトンの密度比と音速比の2-3%程度の変化でTSは20 dB(現存量推定値で100倍)変化することが報告されており(Chu et al., 2000)、正確な現存量推定のためにはTSの季節や年による変動の程度をあらかじめ知っておく必要があります。そこで本研究では、北海道釧路沖でツノナシオキアミの密度比、音速比を5年間にわたって測定し、その年変化を調べました。次にこれらのパラメータを使い、音響調査で使用される周波数38、70、120、200 kHzについて、ツノナシオキアミの姿勢平均TSを計算し、現存量推定に必要な全長とTSの関係を明らかにしました。
[成果の内容・特徴]
調査は2010〜2014年の期間、北海道釧路沖で行いました。サンプル採集には、網口面積5 m2のフレームトロールであるMOHT、10 m2の多層曳きが可能なMOCNESS、口径80 cmのリングネットを使用しました。サンプルからツノナシオキアミのみを抜き出し、密度比と音速比の測定を行いました。密度比と音速比はそれぞれdensity bottle法とTチューブを用いた伝搬時間計測法で測定し、密度比と音速比に年変動がどの程度あるかを確認しました。
各年の密度比と音速比を使用して計算したツノナシオキアミの姿勢平均TSを図2に示します。4周波とも各年の間で姿勢平均TSに大きな変化がないことがわかりました。また、すべてのデータを使用した近似曲線から、周波数毎のTLと姿勢平均TSの関係式を得ることが出来ました。
[成果の活用面・留意点]
本研究の結果からツノナシオキアミの密度比と音速比の年変化は、TSに大きな影響を与えないことが示されたため、これからは本調査海域のツノナシオキアミの現存量推定には、本研究で示した関係式を使用することができます。
[その他]
研究課題名:水産資源調査・評価推進事業のうち国際水産資源動態等調査解析事業(補助)
研究期間:2010〜
予算区分:水産庁補助事業費
研究担当者:福田美亮、澤田浩一、今泉智人、松裏知彦
発表論文等:2022年度海洋音響学会論文賞受賞論文
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[具体的データ] |
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